漫画レビュー「女王の花」国のため、愛する者を突き放し、人を斬る。残酷な運命に立ち向かう女王の物語
こんばんは、妖子です。
とても読み応えのある少女漫画に出会いました。
「生きること」の苦しさ、素晴らしさを見事に描き切った作品です。
★女王の花/和泉かねよし★
10秒でわかる女王の花
昔昔あるところにお姫様がおりました。聡明で美しく勇敢。女性でありながら、王になるべくして生まれてきた素晴らしいお方です。
しかし、王になるための過程は、想像を絶する苦行でありました。
謀反、復讐、妬み、恨み、そのすべてを一身に背負い、いくつもの屍を乗り越えねばなりません。
愛し、愛される行為すら拒絶し、涙をこらえながら前に進む。それが王。人の上に立つ者の幸せとは。
少女漫画の枠を越えた傑作ドラマ。テーマは「絆」と「王」
戦、恋愛、仁義、コメディ。すべての要素がバランス良く詰め込まれた全15巻。
絵があまり好きではなかったので、最初の3巻で挫折かと思われました。
しかし!当初の気持ちが嘘のよう!!あれよあれよと引き込まれていく。
戦モノにしては、登場人物少なめ。かつ、一人一人が個性的で、キャラが確立しているのもポイント。
それぞれの関わり方や関係性がうまく描かれ、心の揺れ動きや移ろいも絶妙で、読んでいて飽きません。登場人物が亡くなる時は、いちいち感傷に浸ってしまうのが不可避。
恋愛と呼ぶには、重く、切なく、深すぎる
主人公は王女・亜姫(あき)と、その付き人の薄星(はくせい)のダブル主演と言い切ってしまって良いでしょう。この二人の絆なくして、物語は語れません。
身分が異なるため、主従関係にあることすら、不自然な二人。
よくある禁じられた恋、とかそういうありきたりな設定には一切重きが置かれません。
複雑な環境に身を置く姫と、その付き人だから「こそ」生まれた絆は、最後の最後まで物語の軸にして、素晴らしい結末をもたらします。
それぞれの王の形。己の忠義を据えよ
王の座をめぐって熾烈な争いを繰り広げる4国が舞台。
世代を飛び越え、様々なタイプの王が登場します。
ただただ、性悪で残忍な印象で終わりそうなキャラクターも、それだけにとどまらない味付けは作者の腕そのもの。
「王とはなにか」。現代社会にも通じる何かが15巻を通して描かれます。