「先生の白い嘘」レイプを題材に描くリアルな性の格差<漫画レビュー>
こんばんは、妖子です。
未だ根強くはびこる「性の格差」を描いた全8巻。
暗い気持ちになりますが、読み応えは保証します。
題材を別にしても、ひとつの漫画作品としても夢中になってしまったので、今回のレビューは力(ちから)入ってますよ!
それでは、いきましょう!

タイトル:先生の白い嘘
ジャンル:社会問題
見どころ:レイプ、DV、性の格差を描くシリアスな社会派漫画
ブログ内でのネタバレ:あり
連載年:2014-2017
連載誌:モーニング
10秒でわかる「先生の白い嘘」
親友の婚約者にレイプされ、その後も関係を持ち続けることで苦しむ高校教師の原 美鈴。
「女だから仕方ない」。
諦めようとする姿勢とは裏腹に、自分の中に存在する、自分と相手への怒りや憎しみに向き合えずにいた。
そんな折、自身が担任する男子生徒・新妻 祐希が人妻とホテルで関係を持ったとして、学校で問題沙汰となる。
美鈴は新妻と個人面談をする中で、隠し持っていた「性に対する感情」を初めて表に出し、そのことがきっかけで何かが変わり始める。
性に囚われた登場人物たち
百聞は一見に如かず、ということで、相関図作りました。
紹介文の中には、若干のネタバレを含みます。
モーニングで掲載された意味
サラリーマンから圧倒的な人気を誇る漫画雑誌「モーニング」。
ここに性が題材の社会問題が掲載されることには、とても大きな意味があるのではないでしょうか。
レイプの被害者は、女性・男性と両方の性で描かれます。
ほとんどの男性にとって「レイプ」はAV作品のジャンルでしかなく、「する側」であることがほとんどだと思うのです。
空想世界で「レイプ」するシチュエーションを楽しんでいる。
それはそれで良いのですが、日常に持ち込まれた途端、娯楽とは程遠い行為であることが、限りなくリアルに近いフィクションで示されるわけです。
そして、この作品の核である「性の格差」にも、レイプとは別の角度からも切り込んでいきます。
実際にあった、強姦罪やレイプの数秒のニュースは、あくまでも他人事であり、記憶に残りません。
性教育を受けていない大人にとって、感情移入しやすいカジュアルなメディアこそ、絶好の教材です。
まさにそれが漫画であり、こうした作品がもっと世に出されればと感じます。
現実世界ではあり得ないエンディング
※ネタバレあり。
すべての登場人物に対し、「こうあるべき」という「理想」のエンディングが用意されています。
この物語のオチに文句をつける、ということではありません。素晴らしい作品であり、読者には優しい結びです。
しかし、現実はそれほど甘くない。
実際には、ますます状況はエスカレートし、悲惨な物語が続くケースも、多々あるのではないでしょうか?
性暴力は根深く、今日、明日での根絶は難しいです。
しかし、どんな経緯があれ、許されるものではありません。
読み終わった後は、モヤモヤとした後味が残ります。
それは、こうしたトラウマを残す暴力が、今日もどこかで行われていると考えてしまうから。
是非ご一読ください。